AV新法は2022年6月23日から施行された法律であり、この法律によりAV撮影の現場は混迷を極めました。

そしてこのAV新法は個人で制作する同人AVにも適用されるので、FC2、ファンティア、マイファンズ等でアダルト配信をする場合、AV新法を理解してないと最悪の場合逮捕に直結します。

本記事では、具体的なAV新法の逮捕事例と、逮捕されないための正しい知識について風営法専門行政書士が解説します。

契約書の不公布が一番多い逮捕原因

AV新法第4条は次のとおり規定されています。

第四条(出演契約)
出演契約は、性行為映像制作物ごとに締結しなければならない。
2出演契約は、書面又は電磁的記録でしなければ、その効力を生じない。
3前項の出演契約に係る書面又は電磁的記録(以下「出演契約書等」という。)には、制作公表者及び出演者の氏名又は名称その他制作公表者及び出演者を特定するために必要な事項並びに当該出演契約の締結の日時及び場所のほか、次に掲げる事項(当該制作公表者に係る部分に関する事項に限る。)を記載し、又は記録しなければならない。
一当該出演者が性行為映像制作物への出演をすること。
二当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影を予定する日時及び場所
三前号の撮影の対象となる当該出演者の性行為に係る姿態の具体的内容
四前号の性行為に係る姿態の相手方を特定するために必要な事項
五当該性行為映像制作物の公表の具体的方法及び期間
六当該性行為映像制作物の公表を行う者が制作公表者以外の者であるときは、その旨及び当該公表を行う者の氏名又は名称その他当該公表を行う者を特定するために必要な事項
七当該出演者が受けるべき報酬の額及び支払の時期
八その他内閣府令で定める事項

重要部分を太字にしました。
条文のとおり、AVを撮影する場合都度出演者に契約書を公布しなければなりません。

都度契約書を公布する趣旨は、出演者(主にAV女優さん)の権利と立場を守るため。
冒頭でも書いたとおり、この契約書交付義務は同人AVにも適用されます。

なので、ファンティアやマイファンズ等で女性モデルを使って性的な映像作品を作る場合、必ず相手の女性に契約書面を公布しなければなりません。
これを怠った場合、6ヶ月以下の懲役若しくは100万円以下の罰金又はこれを併科されます。

今年1月にも、契約書の不公布で逮捕された会社役員の事例があります。
参考: 「出演したが契約書などもらっていない」AV新法 違反容疑で名古屋市の男(42)逮捕

また同年2月にも、同じく契約書の不公布で逮捕された事例を確認。
参考: 「AV新法」で県内初検挙 女性に出演契約書など交付せず県内のホテルで撮影 男を逮捕【佐賀県】

AV新法で最重要なのはしっかりと書面で契約を結ぶことなので、その書面を結んでないとなれば一発逮捕も十分ありあえます。

知らなかったでは絶対済まされないので、同人AVを制作する場合でも必ず契約書面を公布しましょう。
多数のニュースを確認する限り、AV新法の逮捕で一番多いのは間違いなくこの契約書の不公布です。

無修正動画をアップロードからAV新法違反に

2022年の6月、会社経営者の男がAV新法で規定されている契約書面を公布しないことに加え、無修正で動画をアップロードしたことであえなくお縄となった事例があります。
参考: 女性に「無修整」と告げずAV撮影か 容疑の男、AV新法初適用

無修正動画のアップロードは、刑法第175条に規定されている「わいせつ物頒布等」の罪に該当します。
よって、この会社経営者の男は両罰規定の適用により、AV新法違反に加え、刑法違反にも問われました。

記事には詳しい背景が書いてないのでこれは私の想像ですが、おそらく最初は無修正動画が警察のサイバーパトロールに目をつけられ、無修正動画からAV新法の契約書交付義務違反の発見につながったのだと思われます。

なので、無修正動画を入り口に、他の違反事項まで暴かれてしまったという話だと推察されます。

無修正動画の投稿で摘発されるケースはかなり多いので、同人AVを制作する場合は絶対にやめましょう。

よくある勘違いですが、海外のサイトを使ってるから無修正でも平気という誤ったデマが流布されていますが、もちろんそんなことはありません。
海外のサイトを使っていようが、活動場所が日本である以上日本の法律が適用されます。

無修正動画の投稿は厳密にはAV新法とは関係ありませんが、無修正動画が目立つことでAV新法違反にも直結するのでご注意を。

おわりに

AV新法はAVを撮影する側にとってはとても負担です。
撮影ごとに契約書を公布しなければならないし、撮影制限期間と映像公開制限期間が設けられてる上に、適法に撮影したとて女優側から無条件で契約解除ができてしまうため、とにかくきつい。

これではAV業界が円滑なビジネスができなという声が上がり、法改正の機運が高まってはいますが、現状はこのルールなので、このルールに沿ってやっていくほかありません。

AV新法の簡単な概要については下記記事でも解説していますので、よければご参照ください。
参考: AV新法/AV出演被害防止・救済法におけるAV製作者の注意点!同人AVとの関係も解説