AV新法が施行されたことにより、AV撮影、アダルト配信、などをする場合は出演契約書と説明書面の交付等義務が生じました(AV新法第6条)。

今回は出演契約書には、具体的に何を記載すればいいのかについて行政書士の私が解説します。

AV新法の契約書に記載すべきこと

AV新法が定める出演契約書は、好き勝手に条項を定めればいいわけではなく、AV新法が規定する一定のルールがあります。

そのルールから逸脱すると、出演契約書を交付したことにならず罰則の対象となってしまいます。
AV新法が定める出演契約書の記載事項は第4条3項に規定されています。それが以下。

 当該出演者が性行為映像制作物への出演をすること。
 当該出演者の性行為映像制作物への出演に係る撮影を予定する日時及び場所
 前号の撮影の対象となる当該出演者の性行為に係る姿態の具体的内容
 前号の性行為に係る姿態の相手方を特定するために必要な事項
 当該性行為映像制作物の公表の具体的方法及び期間
 当該性行為映像制作物の公表を行う者が制作公表者以外の者であるときは、その旨及び当該公表を行う者の氏名又は名称その他当該公表を行う者を特定するために必要な事項
 当該出演者が受けるべき報酬の額及び支払の時期
 その他内閣府令で定める事項

契約書面に上記の内容が盛り込まれていないと、有効な出演契約書になり得ません。
一つずつ解説していきましょう。

1. 当該出演者が性行為映像制作物への出演をすること

出演者(女優さん)がちゃんとアダルトな動画の撮影に承諾していることを確認するための条項。

AV新法は、出演強要トラブルなどで心身ともに重大な被害が生じている人を救うための法律なので、「出演者はこの撮影にはちゃんと同意していますよ」ということを定め、出演強要ではないことを客観的に証明する必要性があるのです。

2. 撮影する日時と場所

撮影する日時と場所についても具体的に記載する必要があります。
したがって、契約書を巻く段階で撮影日時と場所を確定しておかなければなりません。

3. 撮影の具体的な内容

撮影の具体的な内容を記載します。
AVの内容を法的な視点で記すと、例えば次のような文章が考えられます。

◯条 撮影内容について
本作品は、性行為に係る人の姿態を撮影した映像、並びにこれに関連する映像及び音声によって構成されるものである。
撮影は、被写体となる出演者が他の出演者と合意の上で行う性行為の場面を含み、映像には出演者の裸体、性器、性行為の描写が明確に映される。
また、本作品には以下の内容が含まれる予定である:
・口腔、膣、又は肛門を用いた性交若しくは性交類似行為
・性器への愛撫行為及び体液の描写(例:射精、愛液等)
・手枷、目隠し等の軽度な拘束行為(※該当する場合)
・性的サービスを受ける/提供する役柄の演技(※役割設定がある場合)

大事なのは、これから撮影する映像が性行為であること、出演者がその点に対して理解し同意していることです。

4. 撮影の相手方の特定

女優さんの相手をすることになる男優さんを特定する事項です。
氏名、住所、生年月日、連絡先、職業等の個人を特定可能な事項を記載していきます。

相手が複数人に及ぶ場合は、全て特定する必要があります。

5. 作品の公表方法と期間

制作した映像は何らかの形で公表し販売をすることになりますが、その公表方法と、公表期間について具体的に記載することが求められます。

例えば作品をFC2で販売するならその旨を記載します。
販売期間を設定する必要がありますが、これは自動更新条項にしておくのが望ましいでしょう。

例えば販売期間は3年としつつも、その後出演者から異議申し立てがなければ3年目以降も自動で契約が更新されるみたいな条項です。

6. 製作者以外が公表する場合、その旨とその者を特定する事項

制作する人と、映像を公表する人が別の場合、その旨を記載するのとそして映像を公表する人を特定する事項を記載します。

7. 報酬の額と支払いの時期

出演女優さんの出演料と、いつ出演料を支払うかを明確に明記します。

8. 映像を公開する国又は地域、自動公衆送信情報など

制作した映像をどこの国で配信するか、そして自動公衆送信設置者の氏名又は名称及び住所地の属する国も記載する必要があります。

例えばFANZAで配信する場合は、その名称そして住所地などを記載して特定する必要があります。

もし契約書を交付しないと?

すでにAV新法違反で逮捕者が多く出ていますが、そのほとんどが出演契約書の不交付による違反です。
つまり、契約書を巻かずにAVを撮影しているわけですね。

契約書の不交付は、6ヶ月以下の懲役もしくは100万円以下の罰金、又は両方を併科されます(第21条)。

仕事柄AV新法の逮捕ニュースをよくチェックするようにしているのですが、ほぼ全ての違反が契約書の不交付であり、逆にそれ以外で逮捕になっている人は私は見たことがありません。

なので、契約書をちゃんと交付しているかは警察がいの一番に確認するポイントです。

しっかり契約書を交付し、交付した契約書をちゃんと管理しておき、警察の捜査が入ったときにいつでも契約書面を見せられる状態にしておくべきでしょう。