風俗業界においては、現在は無店舗型性風俗店(いわゆるデリヘル)が主流であり、店舗型の風俗店は衰退の一途を辿っています。なぜかというと、店舗型の規制がめちゃくちゃ厳しいからです。

本記事では、そんな店舗型の風俗店を新規に開業できるかを風営法専門の行政書士が解説します。

店舗型の性風俗店(ピンサロ・ソープランド等)の新規開業はほぼ無理です

店舗型性風俗は「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」の2条6項に規定されている営業です。

この法律において「店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。
一 浴場業(公衆浴場法(昭和二十三年法律第百三十九号)第一条第一項に規定する公衆浴場を業として経営することをいう。)の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業
二 個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業(前号に該当する営業を除く。)
三 専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場(興行場法(昭和二十三年法律第百三十七号)第一条第一項に規定するものをいう。)として政令で定めるものを経営する営業

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条6項

具体的には、「ソープランド」「ピンサロ」「レンタルルーム」「ラブホテル」などが店舗型性風俗店に該当します。

そして、無店舗型と異なり店舗型は厳しい営業規制があります。根拠条文が以下。

店舗型性風俗特殊営業は、一団地の官公庁施設(官公庁施設の建設等に関する法律(昭和二十六年法律第百八十一号)第二条第四項に規定するものをいう。)、学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定するものをいう。)、図書館(図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定するものをいう。)若しくは児童福祉施設(児童福祉法第七条第一項に規定するものをいう。)又はその他の施設でその周辺における善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する必要のあるものとして都道府県の条例で定めるものの敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲二百メートルの区域内においては、これを営んではならない。
2 前項に定めるもののほか、都道府県は、善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため必要があるときは、条例により、地域を定めて、店舗型性風俗特殊営業を営むことを禁止することができる。
3 第一項の規定又は前項の規定に基づく条例の規定は、これらの規定の施行又は適用の際現に第二十七条第一項の届出書を提出して店舗型性風俗特殊営業を営んでいる者の当該店舗型性風俗特殊営業については、適用しない。
4 都道府県は、善良の風俗を害する行為を防止するため必要があるときは、政令で定める基準に従い条例で定めるところにより、店舗型性風俗特殊営業(第二条第六項第四号の営業その他国家公安委員会規則で定める店舗型性風俗特殊営業を除く。)の深夜における営業時間を制限することができる。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第28条

長いので重要部分だけ太字にしました。
まとめると28条の重要論点は以下の3つです。

1. 官公庁施設、学校、図書館、児童福祉施設、その他都道府県の条例で定める敷地の周囲200メートルの区域内においては店舗型性風俗店は営業不可
2. 都道府県の条例により店舗型性風俗の営業自体を禁止することができる
3. これらの規定が施行される前に営んでいた店舗型性風俗店は適用外(いわゆる既得権益)

一つずつ解説していきましょう。

1. 周囲200メートルに対象施設があると営業不可

なんとなく、学校がそばにあると風俗営業ができないみたいな話を聞いたことがあるかもしれませんが、まさにそれです。
店舗型性風俗に関しては、官公庁施設、学校、図書館、児童福祉施設等の周囲200メートルの区域内においては営業不可となります。

官公庁施設とは、いわゆる役所などの行政機関を指します。

「学校」は学校教育法に規定されたものが対象なので、専門学校は学校教育法上の「学校」ではないので、専門学校は対象施設にはあたりません。

条例により、地域を定めて、店舗型性風俗特殊営業を営むことを禁止することができる。」とあるので、県の条例により対象施設が追加されている場合があります。
例えば千葉県の例をみると、千葉県の風営法施行条例第13条の「店舗型性風俗特殊営業の禁止区域の基準となる施設」に以下の施設が規定されています。

・ 診療所
・ 公民館
・ 博物館
・ 公園

千葉県においては、上記の施設が200メートル以内にあると店舗型性風俗の営業は不可となります。
以上のように、県によって禁止区域の対象となる施設が違ったりするので、必ず県の条例は確認するようにしてください。

2. 都道府県の条例で営業規制

風営法28条には、「条例により、地域を定めて、店舗型性風俗特殊営業を営むことを禁止することができる。」とあります。
したがって、そもそも県の条例で店舗型性風俗の営業を禁止している場合、周囲200メートルに対象施設がなくても営業自体ができません。

例えば神奈川県の風営法施行条例第11条の1項「店舗型性風俗特殊営業等の禁止地域」では、ソープランド、ピンサロ等の性的サービスを提供する店舗は、県内全域で営業不可となっています。
なので、神奈川県において新規にソープランドやピンサロを営業することは条例上不可能なのです。

3. 既得権益

神奈川県では新規にソープランドやピンサロを営業することができないと書きましたが、では神奈川県にはソープランドやピンサロが1店舗もないかというと、そんなことはありません。私の事務所は神奈川県相模原市にありますが、駅近くにピンサロ店が1店舗存在しています。

こうした店舗はいわゆる「既得権益」と呼ばれるお店であり、風営法の規制が緩かった頃に作られています。
風営法28条には、「これらの規定の施行又は適用の際現に第二十七条第一項の届出書を提出して店舗型性風俗特殊営業を営んでいる者の当該店舗型性風俗特殊営業については、適用しない。」とありますので、規制前に作られた店舗が既得権益として残っているのです。

新規に店舗型性風俗店(ピンサロ・ソープ等)を開業するときに確認すべきこと

まとめると、新規に店舗型性風俗店(ピンサロ・ソープ等)を開業する場合、周囲200メートルに対象施設がないかどうかと、都道府県の条例を確認してください。

都道府県の条例を確認するのはかなり骨が折れるので、私は全国の都道府県の風営関連条例が掲載されている「風営適正化法関係法令集」を愛用しています。

おそらくほとんどの風営法専門行政書士が愛用していると思います。

なぜ店舗型性風俗特殊営業の規制が厳しいのか

これは風営法の目的規定を読むと理解できます。
以下が条文。

この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第1条

そもそも風営法は、少年の健全な育成と、清浄な風俗環境を保持することが大きな目的です。

そうなると、街中の至る所にピンサロやソープランドが堂々と営業していたら、子供たちにとっては有害な影響を与えるでしょうし、街の景観やブランドイメージを損なう恐れもあります。
なので、店舗型性風俗には厳しい規制を課し、地域特定の特定の場所のみでしか営業を許可しない方向に進んでいったのでしょう。

その点デリヘルは店舗がなく基本インターネットでの集客がメインなので、子供の目に触れることもなければ、街の景観を損ねることもないので、ここまで隆盛を極めたのだと思います。

風俗関係で起業をしたいなら、デリヘルの方が初期投資が安くすむので断然おすすめです。
当事務所はデリヘルの届出のサポートをしていますので、気軽にご連絡ください。