よく業界で話題になるトピック。
風俗嬢は雇用契約か業務委託契約か、という問題です。

結論、労働者性が認められれば風俗嬢でも雇用扱いになり、労働者性が認められなければ業務委託になります。
詳しく解説します。

労働者性の有無の判断基準

労働者性の有無の判断は、旧労働省労働基準法研究会が作成した「労働基準法の『労働者』の判断基準について」が有用です。実際、多くの裁判例でもこの基準が使われています。
参考: https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000xgbw-att/2r9852000000xgi8.pdf

簡潔にまとめると、次の要素があると労働者性の補強材料になります。

【労働者性を強める要素】
・ 使用者の指揮監督下にあるか
※通常注文者が行う程度の指示等に止まる場合には、指揮監督を受けてるとはいえない
・ 欠勤した場合その分の報酬が控除され、いわゆる残業をした場合通常の報酬とは別の手当(残業代)が支給される場合
・ 採用委託等が正社員と同様の選考過程の場合
・ 源泉徴収している、労働保険の適用対象にしている、服務規律を適用している、退職金、福利厚生等を用意しているなど
・ 仕事の依頼等への諾否の自由がない、拘束性がある、代替性がない(補助者等を使い業務を代わりにできない)、報酬が時間単位日払い

・ 専従性の程度。他の業務に従事することが事実上制限される、または時間的に困難な場合

以上の要件が多いほど労働者性の補強になり、裁判では労働者として認められる可能性が高くなります。

逆に次の要素があると事業者性が強まり、業務委託契約の補強材料になります。

【事業者性を強める要素】
・ 本人自らの判断において補助者を使うことが認められている場合
・ 高価な機械、器具の危険負担をしている場合
・ 報酬が高額

風俗嬢は労働者か?

では風俗嬢は労働者か?
一口に風俗嬢といっても様々な雇用形態があるので一概には言えませんが、先ほど紹介した労働者性の要素があれば「労働者」と判断されます。
ポイントは次のとおり。

①シフトの自由

女性キャストのシフトが原則固定で、キャスト自身にシフトを選ぶ自由がなければ、拘束性が認められるため労働者性が補強されます。
とはいえ、シフトは本人の自由で、店側からは一切指示していない場合でも、遅刻や欠勤などで罰金がある場合は、時間の拘束と解釈されかねないので、労働者性が補強されます。

②接客マニュアル

接客マニュアル等があり、細かく接客のルールが指定されている場合などは、キャストが使用者の指揮監督下にあると判断される要素を強めるため、労働者性が補強されます。

③兼業禁止

一つの店舗だけで働くよう強制される、あるいは強制されなくても時間的他の業務に従事することが困難な場合、専従性が補強されるため労働者性を強めます。
「副業禁止」という触れ込みでキャストと契約したら、労働者性を補強する材料になるでしょう。

原則風俗嬢は業務委託契約

先ほどあげた3つが該当すると、風俗嬢は労働者性が補強され雇用契約と判断をされる可能性が高くなります。

雑に説明すると、風俗嬢の自由を制限すればするほど労働者性は補強されます。
業務委託契約にするなら、キャストをいち事業者として見て、しっかり事業者間としての契約を結ぶべきでしょう。

当事務所は業務委託契約書の作成を請け負っていますので、お気軽にお問合せください。