性風俗店を利用する方には馴染み深いレンタルルームですが、果たしてこのレンタルルームは新規に営業をすることは可能なのでしょうか?
結論、ハードルはかなり高いですが一応は可能です。
風営法専門の行政書士が詳しく解説します。
レンタルルームとは?
レンタルルームとは、風営法で以下のように説明されています。
専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む。以下この条において同じ。)の用に供する政令で定める施設(政令で定める構造又は設備を有する個室を設けるものに限る。)を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業
〜風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律2条6項4号〜
これはレンタルルームのみならず、ラブホテルも規定した条文ですが、施行令でははっきりと「レンタルルーム」と明言した条文があります。
レンタルルームその他個室を設け、当該個室を専ら異性を同伴する客の休憩の用に供する施設
〜風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令3条1項〜
「専ら」とは、概ね7割ないし8割以上をいいます(風営法解釈運用基準)。
法的にはレンタルルームはあくまで一時的な「休憩」をする場所という位置づけで、宿泊できる場合はそれはラブホテルになります。
具体的には以下の設備があるとレンタルルームとみなされます。
・ 回転ベッド、特定用途に使う1メートル以上の鏡、その他性的好奇心をそそる設備(SMグッズなど)
〜風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行令3条3項〜
・ アダルトグッズの自動販売機
・ 長椅子その他休憩ができる設備
レンタルルームを利用したことがある人はわかるかもしれませんが、レンタルルームの個室には枕や毛布などの寝具がありません。
その代わりに長い椅子のような設備があり、利用者はそこで性行為をします。
なぜベッドがないかというと、ベッドなどの寝具を置いてしまうと旅館業法に抵触してしまうため、あのような長椅子設備になるのです。
ラブホテルは宿泊できますが、レンタルルームはあくまで「休憩」する場所ということです。
レンタルルームは店舗型性風俗店です
レンタルルームの風営法上の扱いは、店舗型性風俗特殊営業の4号営業に該当します。
なので、新規にレンタルルームの営業を開始したい場合店舗型性風俗特殊営業の4号営業として届出を出すことになります。
レンタルルームの新規営業はかなり厳しいです
レンタルルームは店舗型性風俗特殊営業に当たるので厳しい出店制限があります。例えば以下。
店舗型性風俗特殊営業は、一団地の官公庁施設(官公庁施設の建設等に関する法律(昭和二十六年法律第百八十一号)第二条第四項に規定するものをいう。)、学校(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条に規定するものをいう。)、図書館(図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定するものをいう。)若しくは児童福祉施設(児童福祉法第七条第一項に規定するものをいう。)又はその他の施設でその周辺における善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為若しくは少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止する必要のあるものとして都道府県の条例で定めるものの敷地(これらの用に供するものと決定した土地を含む。)の周囲二百メートルの区域内においては、これを営んではならない。
〜風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律28条1項〜
条文にある通り周囲200メートルに以下の施設があるとそもそも営業できません。
・官公庁施設
・学校
・図書館
・児童福祉施設
・その他条例で定める施設
これを保全対象施設と呼びます。
また、条例により保全対象施設を追加することもでき、さらに条例で地域を定めて営業を禁止することもできます。
東京都の場合だと、近隣商業地域及び商業地域以外でしか営業できません(第一種文教地区及び第二種文教地区に該当する部分を除く)。
店舗型性風俗はどの県においても強い出店規制があるので新規に営業することはとても厳しいのが現状です。
レンタルルームを営業するための書類
レンタルルームの営業を開始するには以下の書類を所轄の警察署に届け出る必要があります。
1. 店舗型性風俗特殊営業営業開始届出書(別記様式第17号)
2. 営業の方法を記載した書類(別記様式第20号)
3. 営業所の使用について権原を有することを疎明する書類(使用承諾書・賃貸契約書の写し・建物に係る登記事項証明書など)
4. 営業所の平面図及び営業所の周囲の略図
5. 住民票(本籍記載のもの。外国人にあっては国籍記載のもの)の写し
6. 法人の場合は、定款・法人登記事項証明書及び役員全員の住民票(5に同じ)
7. 業務の実施を統括管理する者に係る住民票(5に同じ)
1と2の書類は法定様式で警察署のホームページからダウンロードできます。
3は、賃貸物件を借りる場合は物件オーナーに「この物件をレンタルルームとして利用することを許可してください」という使用承諾書を用意します。
4の平面図は店舗を測量し、jw-CADなどの図面作成ソフトを使い平面図を作成します。
店舗型性風俗特殊営業の手続きはやや難解なので、行政書士に頼むことをおすすめします。
デリヘルとの連携について
デリヘル(無店舗型性風俗)店が特定のレンタルルームを使用している場合、そのレンタルルームがデリヘルの店舗だとみなされ摘発の対象になります。
解釈運用基準に以下の記述があります。
店舗型ファッションヘルス営業(法第二条六項第二号)
〜風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準〜
(2)「ホテルヘルス」と称して派遣型ファッションヘルス営業を装いつつ、レンタルルーム、ラブホテル等を営む者と提携して個室を確保しているような場合も「個室を設け」に該当する。
つまり、デリヘルは風営法上は「無店舗型性風俗特殊営業」として届出を出しているわけですから、店舗という実態があってはなりません。
にもかかわらず、レンタルルームと連携し個室を確保している場合、レンタルルームの部屋が実体上そのデリヘルの「店舗」に該当することになります。
そうなると摘発の対象となり、風営法49条1項により、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、又はその両方が科されます。
実際、デリヘルの有名店「新橋JKプレイ」がレンタルルームと連携しているとみなされ摘発されました。
参考: デリヘルの実態は「店舗型」か 禁止地域で営業容疑、同級生2人逮捕
まとめ
レンタルルームは風営法上は店舗型性風俗に区分されるため、どの県においても厳しい出店規制があり、新規にレンタルルームを開業するのは難しいと言わざるを得ません。
レンタルルームを新規に開業したい場合はまず開業したい地域の条例を確認し、そもそもその地域でレンタルルームを営業することが可能かどうかを調べてください。
調べもせずに先に物件を決めてしまうと、仮にその地域が出店規制がある場合大損害となります。必ず契約前に確認を。
不安であればぜひ風営法専門の当事務所にご相談ください。