営業に接待行為が伴う場合「風俗営業許可」を取らないといけません。
もし風俗営業許可を取らずに接待営業をしてしまった場合、無許可営業となり2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、又はこれを併科されます。

ですが、接待行為とは一体どういうものなのでしょうか?
本記事では風営法専門の行政書士が風営法における接待行為を解説します。

風営法における接待行為とは?

まずは条文を確認してみましょう。
風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)において、接待行為とは以下のように定められています。

この法律において「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律二条三項

歓楽的雰囲気の中もてなすのが接待ということですが、抽象的なのでこれでは具体的な要件がわかりません。
そこで「解釈運用基準」を見てみましょう。

解釈運用基準とは、風営法の条文をどう解釈して運用するかを具体的に示したものです。
その解釈運用基準に接待の定義が以下のように示されています。

接待とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」をいう。
この意味は、営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来
店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手
を特定して3の各号に掲げるような興趣を添える会話やサービス等を行うことを
いう。言い換えれば、特定の客又は客のグループに対して単なる飲食行為に通常
伴う役務の提供を超える程度の会話やサービス行為等を行うことである。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準第四

以上がおおまかな接待の定義で、接待と判断される具体的な行為は以下とされています。

  1. 談笑・お酌等
    特定少数のお客さんの話し相手になったり、お酒を提供したりするなどの行為。
    もっとも、世間話程度の会話や、単にお客さんの注文に応じてお酒を提供するだけなら接待行為にはなりません。
  2. ショー等
    特定少数のお客さんに対して、客室等でショーや演奏等を見せる行為。
  3. 歌唱等
    特定少数のお客さんに対して、歌う行為を推奨(カラオケなど)、又は一緒に歌ったり、手拍子や拍手などで盛り上げたりする行為。
  4. ダンス
    特定のお客さんと一緒になってダンスをしたり、又はさせたりする行為。
    もっとも、技能及び知識を習得させる目的としてダンスレッスンをする場合は接待行為にはなりません。
  5. 遊戯等
    特定少数のお客さんと、遊戯、ゲーム、競技等を行う行為。
    もっとも、お客さん同士、又はお客さん一人でゲームをする場合は直ちに接待に当たるとはいえません。
  6. その他
    お客さんの身体に密着したり、手を握るなどの行為。
    又は、お客さんの口許まで飲食物を差し出し飲食させる行為。


以上の6つが具体的な接待行為の要件です。
ポイントは、店側が主体となり、「店側の積極的行為」により「特定のお客さん」に働きかけ、お客さんも「歓楽的雰囲気を期待して来店する」場合接待行為になるということです。

なので、ショーをやる場合だと、特定少数ではなく不特定多数に行う場合は接待行為にあたりません。
例えば、演劇、お笑いライブ、音楽ライブなどは接待行為ではありません。
お客さんの求めに応じてカラオケをセットするのも接待行為には当たりません。

あくまでポイントは「店側の積極的行為」の有無と、「特定のお客さん」に働きかけているかどうか。そしてお客さんが「歓楽的雰囲気を期待して来店」しているどうかです。

ガールズバーにおける「カウンター越しだから大丈夫」という誤解

ガールズバーを風俗営業許可(1号許可)を取らず、深夜酒類提供飲食店営業届出だけで営業しているお店は多いです。
許可を取らないガールズバー経営者の言い分としては、「カウンター越しだから接待に当たらない」ということだと思いますが、これは大いなる誤解です。というかもはやこれは都市伝説の類です。

なぜなら、風営法には「カウンター越しならOK」という条文は存在せず、そう解釈できるような文言も一切ないからです。

風営法専門行政書士の私としては、なぜカウンター越しなら大丈夫という認識が広がったのかは本当に謎でしかありません。
なので、カウンター越しかどうかは関係なく、あくまで先ほどあげた基準で接待行為の有無を判断します。
カウンター越しであっても、女性店員がお客さんの話相手になったり、一緒にカラオケをしたり、お客さんもそのような行為を期待して来店してる時点で、接待行為に当てはまってしまいます。

例えば去年は都内でバニーガール姿で客引きしてたガールズバーがあえなく御用となりました。
参考: https://www.yomiuri.co.jp/national/20231021-OYT1T50098/

この事件は警察に「接待行為」があると判断され摘発と相成りました。

警察は風俗営業の無許可営業には目を光らせており、特にガールズバーという業態は無許可営業が多いので目立つとすぐに摘発されます。

だったらガールズバーを営業するならみんな風俗営業許可取ればいいじゃん」と思うかもですが、仮に風俗営業許可でガールズバーを始めるとすると、営業時間に制限がかかります。
具体的には、風俗営業許可だと深夜0時までしか営業できなくなります(営業延長許容地域の場合深夜1時まで営業可能)。

また風俗営業だと、店舗の近くに保全対象施設があるとそもそも許可が下りません。
保全対象施設とは、学校や病院などの施設です。

以上の制約の多さから、風俗営業許可ではなく深夜酒類提供飲食店で営業開始するガールズバーが多いのだと推測されます。
ですが、風営法専門行政書士の私としては、接待行為があるならしっかり風俗営業許可を取って営業されることを強く推奨します。

コンセプトカフェも風俗営業許可が必要な場合あり

ガールズバーと同じ理由で、コンセプトカフェ(メイド喫茶など)も接待行為が見受けられる場合、風俗営業許可を取らないと無許可営業になります。

実際、多くのメイド喫茶が風俗営業1号と判断され摘発されています。
参考: https://www.yomiuri.co.jp/national/20210521-OYT1T50111/

特にメイド喫茶はメイドの姿で客引きをすることが多いのでとりわけ目立ちます。
目立てば当然警察も注視するようになります。

「メイド喫茶だから大丈夫だろう」とは思わずに、しっかり風営法の基準に照らし合わせて許可を取るかどうかを判断してください。

【余談】私が初めて行ったガールズバーは無許可営業でした

完全に余談ですが、私が人生で初めて行ったガールズバーは無許可営業でした。

その店は路面店にあるガールズバーで、10人程度しか入れないような小型な店舗。
店の中にはカラオケセットとモニターがあり、お客さん数人がカラオケで歌っていて、それを見ている女性キャストが手拍子をしていました。この時点で風営法的にはかなり微妙。

そして、飲み物を注文すると女性キャストがカウンター越しに会話に付き合ってくれるシステムでした。
これは明確に接待です。前述した通り、カウンター越しだろうと関係ありません。

以上の2点から、総合的に判断して風俗営業に該当しますが、このお店は許可を取っていなかったので(おそらく深夜酒類提供飲食店届出で営業していると思われる)無許可営業ということになります。

まだできたばかりの店だと言っていましたが、路面店で目立つためそう遠くないうちに摘発されそうな気が・・・

私はガールズバーに行ったのはこれが初めてなので面食らいましたが、案外どこもこんなものなのかもしれませんけどね。

まとめ

繰り返しになりますが、「店側の積極的な行為」によって「特定のお客さん」に働きかけ、またお客さんもそのような歓楽的雰囲気を期待して来店する場合接待行為に当てはまります。

警察は内定捜査などを通じて接待行為の有無をチェックするので、警察が来た時点で言い逃れはまず無理です。
風俗営業許可を取らずに接待行為を伴う営業をすると重い刑事罰が科されるので、無許可営業は絶対にやめましょう。