性風俗の中でデリヘルは比較的開業しやすい業態です。
その理由は、無店舗なので開業資金が安くすみ、法的にも規制がそこまで強くないからです。
本記事では風営法専門の行政書士が、デリヘル開業の流れを解説します。

事務所(待機所)を借りる

デリヘルを開業する場合事務所は必須となります。これは警察に届出を出す時の要件にもなります。
そしてほとんどの事業者様が事務所の中に待機所を設けています。

デリヘルは法律上は無店舗型性風俗特殊営業という業態に指定されており、そして無店舗型性風俗特殊営業は場所的要件がないので、どこに事務所を構えても問題なし。

ですが、現実的にはラブホテルやレンタルルームがある場所から徒歩5分圏内の場所が望ましいです。デリヘル店の場所が限られた場所に密集するのは、ラブホテルやレンタルルームが必須の業態だからです。

物件を借りる時に必ずオーナーさんに「使用承諾書」を書いてもらう必要があります。警察の届出に必要になるからです。
使用承諾書は、要はこの物件をデリヘルの事務所として使うことを認めてくださいという内容の書類です。

受付所を設ける場合

デリヘルは場所的要件がないのでどこに事務所を構えても問題ないですが、受付所を設ける場合県の条例がかなり厳しいので、受付所を出せる地域が限られています。
なので、必ず受付所を設ける場合は条例の確認をしてください。

ちなみに神奈川県は県内全域で受付所を出すことが禁止されています。

届出書類を用意する

デリヘルは風営法で規制されている業態なので、デリヘルを開業する場合以下の書類を所轄の警察署に届出を出す必要があります。

・  無店舗型性風俗特殊営業営業開始届出書(別記様式第25号)
・  営業の方法を記載した書類(別記様式第28号)
・  事務所の使用について権原を有することを疎明する書類(使用承諾書・賃貸契約書の写し・建物に係る登記事項証明書など)
・  住民票(本籍記載のもの。外国人にあっては国籍記載のもの)の写し
・  法人の場合は、定款・法人登記事項証明書及び役員全員の住民票

これに加えて事務所、待機所の平面図が必要となります。
当事務所では、平面図はjw-cadで作成しております。

受付所を設ける場合は、受付所の平面図に加え、周囲の略図も必要です。

届出書と営業の方法を記載した書類は法定様式なので警察のHPからダウンロードして記入します。
参考: 性風俗関連特殊営業(様式一覧)

ホームページを使って営業する場合(ほとんどそうだと思いますが)、この時点でドメインを取得しておかないと、営業の方法に記載できませんので、ドメインは届出を出す前に必ず用意しておきましょう。

使用承諾書は先ほども書いた通り、物件を無店舗型性風俗特殊営業の事務所(待機所)として利用することを物件管理者に認めてもらう書類のことです。
これがないとそもそも届出を出せないし、後に物件管理者ともトラブルになる可能性があるので、物件を借りる段階で必ず書いてもらうようにしましょう。

届出の要件

デリヘルは場所的要件も人的要件もないので、基本的に誰でも届出を出すことはできます。
ただ、前述した通り受付所を設ける場合県の条例の規制の影響を受けるので、受付所を設ける場合は必ず確認してください。

所轄の警察署に届出を出す

届出書類が用意できたら所轄の警察署の生活安全課に届出書類を提出します。
所轄の警察の探し方は警察のホームページを確認してください。

ちなみに神奈川県警の場合以下のリンクから所轄の警察署を探すことができます。
参考: 住所から探す/神奈川県警察

届出が受理されると

届出が受理されると届出から10日後に営業を開始することができます。
そして、届出受理後、「届出確認書」という書類が交付されるので、この届出確認書を事務所、受付所がある場合は受付所にも掲示しなければなりません。

届出確認書の掲示義務があるのは無届業者を排除するためです。

デリヘルを適法に運営するための注意点

実際営業を開始するにあたっていくつか注意点があります。
それらが以下です。

・ 従業員名簿の備え付け義務
・ 未成年の対応
・ 本番行為について

順番に解説していきます。

従業員名簿の備え付け義務

デリヘル含む風俗営業は従業員名簿の備え付け義務というものがあります。
根拠条文は以下。

(従業者名簿)
第三十六条 風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、店舗型電話異性紹介営業を営む者、無店舗型電話異性紹介営業を営む者、特定遊興飲食店営業者、第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごと(無店舗型性風俗特殊営業を営む者及び無店舗型電話異性紹介営業を営む者にあつては、事務所)に、従業者名簿を備え、これに当該営業に係る業務に従事する者の住所及び氏名その他内閣府令で定める事項を記載しなければならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第36条

デリヘルに関係する部分は太字にしてあります。
この従業員名簿は必ず事務所に備え付けておいてください。
従業員名簿の必須記載事項は、解釈運用基準と内閣府令第25条によれば以下となります。

・住所
・氏名
・性別
・生年月日
・採用年月日
・退職年月日
・従事する業務の内容

そして従業員名簿は、従業員が退職した日から起算して3年間は保管義務があることにご注意ください。

ちなみにですが、警察が立ち入り検査をする場合まずこの従業員名簿を確認されることが多いです。

未成年者の対応

当然ですが、性的サービスを提供するキャストとして18歳未満を採用することはできません。
キャストを採用する場合必ず公的書類で年齢を確認してください。

また、届出の書類「営業の方法」にて、「広告又は宣伝するときに18歳未満の者の利用禁止を明らかにする方法」にある通り、18歳未満の利用を禁止する方法を問われます。

一般的にはホームページ入り口に、「18歳未満の方はご利用できません」等の表示が考えられます。

本番行為について

デリヘル摘発で多いのが無届業者とそして本番行為の有無です。
本番とはいわゆる挿入行為を指しますが、これは売春防止法で禁じられている行為です。

(定義)
この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。
売春防止法2条

そして売春は当事者に罰則規定はなく、売春の場所を提供した者、売春の斡旋した者、業として売春を管理した者が罰せられます。

売春の周旋をした者→2年以下の懲役又は5万円以下の罰金
第6条

売春の場所を提供した者→3年以下の懲役又は10万円以下の罰金。業として行った場合は7年以下の懲役及び及び30万円以下の罰金。
第11条

業として売春を管理(人や居住先を管理)→10年以下の懲役及び30万円以下の罰金
第12条

売春防止法

当事者に罰則規定がないので、キャストが軽い気持ちで本番行為をしてしまう可能性があるため、必ず面接時に本番行為を禁じるよう強く言い含めましょう。

開業資金について

最後にデリヘルの開業資金について解説します。

これについてはいろいろな意見がありますが、一つ参考になるのはちゃんこFCグループというぽっちゃり専門のデリヘルを作ったちゃんこ@なべおさんの例。ちゃんこ@なべおさんによれば、デリヘル開業資金は300万あればOKとのこと。
300万円の内訳は以下。

・ FC料15万円(初月分)
・ ホームページ制作費用15万円
・ 広告宣伝費20万円(初月分)
・ 事務所契約費用50万円
・ 3ヶ月分の運転資金100万円
・ 予備資金100万円

これはあくまでFCに加入した際の開業資金のためであることに加えて、予備資金100万円も絶対必要というわけでもないので、200万円弱あれば開業できるかと思います。
なので本記事の結論としては、デリヘル開業資金は200万円に落ち着くかと思います。

ただこれはあくまでモデルケースであって、出店場所の家賃相場などで大きく左右されることにご留意ください。

おわりに

当事務所は風営法専門の事務所なので、デリヘルの届出を7万円で代行しております。

デリヘルは人的要件と場所的要件がないとはいえ、風営法上で厳しく規制された営業なので、手続きも煩雑かつ、なんとか届出書類を作成できて開業に漕ぎ着けたとしても、知らず内に法令違反を犯してしまうこともあるので、そうならないためにも是非風営法専門の当事務所にご相談ください!