デリヘルは風営法上「無店舗型性風俗特殊営業」という扱いになります。
デリヘルの運営には当然風営法が絡んできますので、風営法上気をつけねばならない点があります。

本記事では風営法専門の行政書士が、デリヘル運営で逮捕されないため、適法にデリヘルを営業するために気をつけるべきことを解説します。

1. 従業員名簿備付け義務

風営法には、従業員の情報を記載した従業員名簿を備え付ける義務があります。
根拠法令は36条。

(従業者名簿)
第三十六条 風俗営業者、店舗型性風俗特殊営業を営む者、無店舗型性風俗特殊営業を営む者、店舗型電話異性紹介営業を営む者、無店舗型電話異性紹介営業を営む者、特定遊興飲食店営業者、第三十三条第六項に規定する酒類提供飲食店営業を営む者及び深夜において飲食店営業(酒類提供飲食店営業を除く。)を営む者は、国家公安委員会規則で定めるところにより、営業所ごと(無店舗型性風俗特殊営業を営む者及び無店舗型電話異性紹介営業を営む者にあつては、事務所)に、従業者名簿を備え、これに当該営業に係る業務に従事する者の住所及び氏名その他内閣府令で定める事項を記載しなければならない。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律36条

実は風営法関係の摘発事例で一番多いのがこの従業員名簿備付け義務違反です。
以下は警察が発表している令和5年度の風営法事犯の状況。

出典:https://www.npa.go.jp/publications/statistics/safetylife/hoan/R6kouaniinnkaihoukoku3.pdf

従業員名簿の備付けを怠った、必要な記載をしなかった、または虚偽の記載をした場合は、風営法53条3号により、100万円以下の罰金が科されます。

従業員名簿の備付け義務違反の次に多いのは、「従業者の確認義務違反」ですが、要は従業員の言うことをそのまま鵜呑みにして誤った記載をしてしまった場合のことです。
例えば、面接に来た女の子が本当は17歳なのに「18歳です!」と言い張り、それをちゃんとした確認もせずに採用してしまった場合、確認義務違反にあたります。
(というか未成年をデリヘルで働かせてしまうと、風営法違反のみならず児童福祉法違反にもなり得ます)
必ず相手の身分は公的書類により確認するようにしてください。

従業員名簿は以下記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
参考: 風営法と従業員名簿について 必須記載項目、保存期間など解説します

2. 届出確認書の備付義務

デリヘルはその所在地を管轄する公安委員会に届出を出すことにより営業を開始します。
そして届出が受理されると1~3週間ほどで「届出確認書」が交付されます。
この届出確認書を事務所に備え付けておかなければならず、関係者から請求があった時はこれを掲示しなければなりません。

事務所とは別に受付所を設けている場合は、受付所にも届出確認書の備付義務がありますので注意してください。

なぜこのような義務があるのかというと無届業者を排除するためです。

3. レンタルルームやラブホテルとの連携

デリヘルは「無店舗性風俗特殊営業」として届出を出しているので、当然店舗があってはなりません。あくまで無店舗が前提です。
にもかかわらず店舗という実態があった場合風営法違反になります。

よくあるのが、デリヘル店がレンタルルームやラブホテルと連携している場合。
これが外形的に、レンタルルームやラブホテルがデリヘルの「個室」とみなされると、店舗扱いになり風営法違反になります。

実際風営法の解釈運用基準に以下の記述があります。

店舗型ファッションヘルス営業(法第二条六項第二号)
(2)「ホテルヘルス」と称して派遣型ファッションヘルス営業を装いつつ、レンタルルーム、ラブホテル等を営む者と提携して個室を確保しているような場合も「個室を設け」に該当する。

風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律等の解釈運用基準

例えば、デリヘル店が特定のレンタルルームだけを指定している場合は警察に「連携しているのでは?」と疑念を抱かれる恐れがありますので注意してください。

実際、2年前にも「JKプレイ」というデリヘル店がレンタルルームと連携してるとみなされ摘発されました。
参考: デリヘルの実態は「店舗型」か 禁止地域で営業容疑、同級生2人逮捕

罰則は風営法49条1項により、2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金、又はその両方が科されます。

4. 本番行為をする

言わずもがなですがデリヘル店において本番行為は絶対にNGです。
根拠法令は売春防止法。

(定義)
この法律で「売春」とは、対償を受け、又は受ける約束で、不特定の相手方と性交することをいう。

売春防止法2条

ここでいう「性交」とはつまり本番行為。もっと具体的に言うと挿入行為です。
デリヘルはあくまで擬似的性交サービスを提供してるにすぎず、その枠を超えて本番行為を提供してしまうとそれは立派な売春になり処罰の対象となります。

売春の主な罰則規定は以下の3つです。

売春の周旋をした者→2年以下の懲役又は5万円以下の罰金
第6条

売春の場所を提供した者→3年以下の懲役又は10万円以下の罰金。業として行った場合は7年以下の懲役及び及び30万円以下の罰金。
第11条

業として売春を管理(人や居住先を管理)→10年以下の懲役及び30万円以下の罰金
第12条

売春防止法

見れば分かる通り、売春の斡旋をした人、場所を提供した人、業として売春を管理した人が罰則の対象であり、売春当事者に対しては罰則規定が存在しません。

なので、女性キャストがお金欲しさに軽い気持ちで本番行為をしてしまう可能性がありますので、そういうことをさせないようしっかり指導教育をするようにするべきです。

つい最近、デリヘル店「やりすぎ娘」の従業員23人が売春斡旋容疑で逮捕されました。
参考: デリヘル「やりすぎ娘」従業員ら23人を売春斡旋容疑で逮捕 1年で6億円売り上げたか

この店はそもそも面接の段階で「うちは本番店」と説明していたらしいので、店が積極的に関与しているので真っ黒。店名通りやりすぎてしまったのでしょう。

売春防止法は、最長10年の懲役刑が科される恐れがあるので罪としてはかなり重いといえます。
なので絶対に本番行為はさせないようにしてください。

まとめ

デリヘル経営はまともにやっているお店とそうじゃないお店の差が激しいです。
長く続けたいならしっかり遵法意識を持ち適切に営業してください。
デリヘル経営者逮捕の報道がされる場合、大体ここで網羅している事由が原因です。
(もっとも無届業者は論外なので本記事では省きました)

当事務所は風営法専門の事務所なので、デリヘル関係の依頼も受け付けております。
デリヘル開業の届出、変更届出、その他なんでもご相談ください。